解説イオノゾンデによる電離層観測
イオノゾンデによる電離圏観測は、短波帯電波を用いた電離圏の観測手法の一つで、古くから世界中で行われてきています。ここでは、イオノゾンデ観測の仕組みとその観測結果画像であるイオノグラムの見方、その解釈の仕方について説明します。
イオノゾンデ観測の仕組み
イオノゾンデ観測では、短波帯電波の周波数を掃引させながら上空に送信します。発射された電波は、電離圏のプラズマ密度に応じて反射され、地上で受信することが出来ます。電波を送信してから受信されるまでの時間から反射波の見かけ高さを得ます。
イオノゾンデによって取得される電離層の一次観測データをイオノグラムと呼びます。イオノグラムは、横軸が周波数(1~30MHz)、縦軸が見かけの電離層高度(0~1000km)、色が反射波の相対的な強度(0~255)を表していて、その時「どの周波数の電波がどの高さに存在した電離圏によってどの程度の強さで反射されたか」を知ることが出来ます。同時に、「どの周波数の電波を通信に利用できるのか?」を知ることもできます。
図 1 イオノゾンデ観測のしくみ
垂直観測と斜入射観測
図1は、送信点と受信点が同一の「垂直観測」の概念図ですが、送信点とは別の場所での受信も行っており、このような観測を「斜入射観測」と呼びます。斜入射観測では、送受信点の間の電離圏の状態を観測しています。
図 2 鉛直観測と斜入射観測
イオノグラムの見方
図3 イオノグラムと電離圏パラメータ
図3は、イオノグラムにすべてのトレースが現れたとしたときの代表的なパターンを描いたものです。実際のイオノグラムにはこれらのパターンのうちのいくつかがその時々の条件(季節や時間)によって様々な形に現れます。 「fo」で始まる記号は、それぞれあとに続く層の臨界周波数(その層の一番高い所)を示し、「h'」で始まる記号は、はそれぞれの層の見掛けの高さを示しています。
周波数を示すパラメータにはそれぞれO (正常波成分)とX (異常波成分)がありますが、イオノグラムに常に両方が現れるわけではないので注意が必要です。O成分とX成分は常に国分寺、沖縄で0.6MHz、稚内で0.7MHz離れていることがわかっています。(この値は電子ジャイロ周波数の半分に相当します)
パラメータの説明
得られたイオノグラムから、16のパラメータを数値として取り出し、データ提供を行っています。これらのデータは全世界の大学や研究機関で利用されています。また、同様の観
測が世界中で行われており、WDC(World Data Center)の役割として世界中から集められた過去の電離層データを保管、提供しています。
TYPE fbEs M3000F1, M3000F2 df1 - df4
イオノグラムからデータを読み取るときは、数値のほかに、その数値の信頼性などをより詳しく説明するためにアルファベットで限定記号と説明記号をつけることがあります。これらの記号はURSI(国際電波科学連合)の基準に従っています。
例 foF2: 116 [JR] ----> 11.6MHz 吸収により異常波成分から求めた
スポラディックE層の形態。low,flat,cusp type などがある。
F領域のスポラディックE層による遮蔽がなくなる周波数。言い換えるとF層に対してスポラディックE層が透明になる周波数
F1層、F2層それぞれの電波伝搬可能周波数を3000kmを標準距離として算出するパラメータ
散乱が起きたときの散乱幅。df1, df2が正常波成分の散乱の始まりと終り周波数、df3, df4が異常波成分の散乱の最初と終り周波数の値
J -> 限定記号 R -> 説明記号