解説電離圏の基礎知識
電離の生成機構
地球大気は、上層ほどその密度が薄くなります。そこへ太陽の紫外線 (エネルギーの高い極端紫外線)が射すと、原子から電子が飛び出してイオンになります(図1)。この作用を電離とよび、電子とイオンから成る気体は電離ガス(プラズマ)とよばれています。電離圏はプラズマ状態の大気が濃くなった領域です。
図 1 電離の生成
電離圏の高度
図 2 電離圏の高さと構造
電離圏の変動と現象
電離圏は、電離源である太陽光の入射強度や背景大気の状態に応じて時間・空間的に変化します。 日本付近では、基本的にどの領域も南にいくほど電子密度が大きくなります。また、1日周期の変動や季節に伴う変動や約11年周期の太陽活動に伴う変動の他、規則的に繰り返される変動もあります。日本国内でよく見られる電離圏現象には、太陽フレアに伴う「デリンジャ現象」や、磁気圏からエネルギー流入に伴う「電離圏嵐」、主に夏の夜に突如発生する「スポラディックE層」などがあります。それぞれの詳細については、以下の解説をご覧下さい。
デリンジャ現象:https://swc.nict.go.jp/knowledge/ionosphere.html#dellinger_phenomenon
「宇宙天気豆知識 No5. 短波通信が突然できなくなるデリンジャ現象」
電離圏嵐:https://swc.nict.go.jp/knowledge/ionosphere.html#ionospheric_storm
「宇宙天気豆知識 No21. 電子密度の大きな変動 電離圏嵐」
スポラディックE層:https://swc.nict.go.jp/knowledge/ionosphere.html#sporadic_e-layer
「宇宙天気豆知識 No10. VHF放送の混信障害を起こすスポラディックE層」
電波伝搬障害との関係
電離圏の状態は電波伝搬と深い関係があるため、電離圏で生じる現象は、電波の異常伝搬や電波吸収、電波遅延などを引き起こすことがあります。太陽フレアや地磁気の乱れに伴う「デリンジャ現象」や「電離圏嵐」、日本の夏に頻発する「スポラディックE」等が発生すると、図3のように、短波を用いた通信・放送に不具合が生じたり(短波通信の障害)、航空航法や衛星測位などの測位精度が劣化したり(航空機の航路変更、測位(GPS)の誤差)します。